秩父宮ラグビー場
春めいた日曜日、京王線と地下鉄を乗り継ぎ、青山までラグビーを観に行った。オフ・シーズンのラグビーである。ひと月ほどまえ鈴木英輔さんが誘ってくれたのだ。
2時キックオフで全慶応大学対全明治大学の試合なのだが、そのまえに慶応高校普通部対明大中野高校の高校ラグビーがある。これが12時50分キックオフ。ぼくは高校ラグビーを観たことがない。いい機会だと思い、12時半に地下鉄外苑前の改札口でという英輔さんの誘いによろこんで乗ったのだった。
八王子に住んでから電車に乗るために時刻表を調べる習慣がついた。出先によってはまずルートによる料金や時間の差を勘案し、家を出る時間やバスの具合、何より仕事の進行状況を予想してようやく乗る電車を選択するのである。今日は11時4分の京王線に乗り、北野で準特急に、明大前で井の頭線に乗り換える。渋谷からは地下鉄銀座線。銀座線に乗るのはたぶん今年になって初めてである。
外苑前にはぼくが先に到着。なつかしい構内を見回し、出札窓口の端に寄りかかって待った。
英輔さんは開口一番こういった。「この風でしょう、上がったパントがどうなるか、見ものだ」。さすがにラグビーの見巧者である。
実際に見ないと分からないことはあるもので、ぼくは高校ラグビーが12人でプレイするとは知らなかった。あるときスクラムから出たボールをオープンに回さずに蹴ったのだが、右に攻撃ラインがずらりと並んだようすから、回せばもっと容易にトライできたのではないかと思え、蹴ったのは少々もったいない判断だったのではないかと思えた場面があった。そのとき、あれ、何だかヘンだぞと人数を数えたら12人しかいないではないか。相手チームも当然12人。スコアボードを確かめると、名前が出ている数はやはり12人なのだった。15人のほうがやりやすいだろうにと英輔さんと話が一致。ただ、15人の場合、僅かでも強い側が力の差を超えて圧勝してしまうのではなかろうか。高校生のラグビーは動きのそれぞれが基本そのままに展開するようで、パスを受け止められるかどうかといったレベルの技量の差がそのまま点差に結びつくからだ。慶応普通部3年宮垣誠と明大中野3年筆谷優樹のプレイが印象に残った。
高校生のゲームは全慶応の圧勝。点差は覚えていない。
15分の休憩時間のうちに観客席の雰囲気が一変した。
およそ1000人ほどの入りで、要するに席はがらがらなのだ。われわれ2人が座る正面スタンド中央席だけに人が寄り、向かい側のバックスタンドを見ると応援の学生席以外はさらに人が少ない。ところが、座席ブロックの最上部に“単独客”がぽつりぽつりと座っている。ぼくを誘ってくれた鈴木英輔さんと同じ根っからのラグビー・ファンなのだろう。
やがて選手発表があり校歌が始まった。慶応が先で、校歌といわず塾歌という。これが、もう何十年もむかし神宮球場に通った早慶戦を思い出させる。
ところでぼくは、その塾歌の後段 ♪樹てんかな この旗を に続く ♪強く雄々しく樹てんかな の部分で「雄々しく」のことばに妙に敏感になっていた。大阪樟蔭大学の精神科医・夏目誠氏の話に「病にとっては男も女もない、まず人間であるわけでともに愉しければ笑い、悲しければ泣く。辛いときには“つらい”というのが当たり前、それを我慢して口に出さないからうつ病になるのです。だから、たとえば“雄々しい”などということばは死語にして欲しい」とあったのを思い出したりしていたのだ。
しかし、エール交換を前提とする塾歌校歌は聞いていて快かった。スタンドのあちこちに、立ち上がり直立不動で塾歌を歌う姿があった。40代の細身、工学デザイナーかも知れない男や、70代の悠々自適組、いい体躯をした働き者っぽい60代などなど、一見するだけでラグビーの“通”を思わせる観客たちである。ここに1人、あそこにも1人、中には黄色と黒の慶応ラグビー部の小旗を持つ者もいて、低いがはっきり聞こえる声で塾歌を歌っていた。明治の校歌になると英輔さんが、♪白雲なびく の明大校歌は六大学の中で一番いいという。
ぼくが見ても力の差がハッキリしており全慶応vs全明治の試合も慶応の快勝だった。慶応では1年の出雲隆佑、明治では3年笠原誠を忘れないようにしよう。来季に活躍するかも知れない。
いやぁ、初めての秩父宮ラグビー場は面白かった。行ってよかった。病みつきになりそうだ。
帰りにビールを飲もうということになり、英輔さんが選んだ店が何と白井ビル1階の札幌ラーメンだった。ここに入ると、どうしても70年代から80年代の“あの頃”を思い出してしまい、胸に迫るものがある。
ビールを飲みながら英輔さんと多くの話をした。ことに17歳の航空少年兵として入った大井航空隊での体験談に驚かされた。 <2006/03/12>
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コメント
はじめまして、チャーリーといいます。
livedoorのブログ検索でたどり着きました。私もオール慶明見に行きました。もの凄い風でしたね。前半風上の明治の選手が自陣から蹴ったキックが飛び過ぎてインゴールを超えてしまったこともありました。
強風のせいか、グランドも土煙が上がってました。昔(といっても数年前までですが)は芝生の緑が奇麗で、いつも秩父宮の着くと芝の緑に目が洗われるようでした。試合のことをブログに書きましたので、もしよろしければお越し下さい。
投稿: チャーリー | 2006年3月18日 (土) 20時56分