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2006年11月 4日 (土)

P.コーンウェルのスピード感

神の手(上・下)
          パトリシア・コーンウェル 著
                 相原真理子 訳

 ケイ・スカーペッタを主人公とする検屍官シリーズも本書で14作目。ケイはいま、フロリダにある全米法医学アカデミーのスタッフとして捜査全般に関わる仕事を行っている。恋人のベントン・ウェズリーは、ボストン近郊の精神科病院で「殺したいという衝動」にとりつかれた強迫的殺人犯の“脳の機能”を研究中。従って本書には、フロリダ州ハリウッドとボストンを主な舞台に数件の残忍無惨な殺人事件をめぐる物語が描かれていく。
 ある日ケイの捜査仲間であるマリーノに正体不明の男から電話がかかってきた。脅し文句を並べた男は自らを「ホッグ(HOG)」と名乗る。ケイも指摘する通り妙な名前だ。「神の手(ハンド・オブ・ゴッド)の頭文字をとったのかもしれねえ」とマリーノ。表題にも選ばれたこの名が物語全編に踊り、血なまぐさく不気味な効果を醸し出す。
 章を追って次々に惨殺死体が発見される。喉をかき切られた女や口に散弾銃を突っ込まれて頭を吹っ飛ばされた男、ある若い女は裸の体に入れ墨のような「赤い手形」がつけられていた。強姦され、拷問され、脳がグジャグジャとなった数人分の死体は犯人が異様に冷酷な「捕食者」であることを示し、ベントンの研究が意味を持ってくる仕立て。そこには米国の現実を突きつける趣があり読み手は慄然とさせられる。
 今までのシリーズ作品にはなかったスピード感が特長。サスペンスが盛り上がり、驚嘆すべきエンディングに繋がっていく。

  (講談社文庫 各714円) 2006年02月 日刊現代掲載

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