吉本隆明著 『超資本主義』
このところ折に触れて吉本隆明の情況論を読み返しているのだが、社会動向の見方がじつに鋭いことに驚かされる。いろいろ読んでいる中には刊行後すでに10年以上経つ本もあり、たとえば徳間書店から出た『超資本主義』など、いったいこの本はいつ出たのであったかと奥付を見ると、第1刷の発行日が1995年10月31日となっている。なんと12年も前なのだ。
この本を刊行されて間もなく読んだときには、もちろん12年後に再読するなどと考えたりはしなかった。
すると、もしもいま、たまたまの成り行きから再読することがなかったら、たとえば以下のような発言が12年前に成されていたと感服することもなかったことになる。
こういう発言だ。
「大胆なことをいえば、ニューヨークや、東京やパリなどの市街地とおなじように、農業が自然産業(第一次産業)としては、コンマ以下の割合になってしまうことが、長い射程ではありうることだと、徹底してかんがえたほうがいいのだ。そのときは贈与経済を根幹にして、他地域や国家が国際的な農業担当地の役割をするという事態になるとおもう」。
いまでこそ、すうっと理解できる見方であるにしても少なくとも12年前のわたしは、この文章をいま分かるようには分からなかったのだと思う。あるいは分かったつもりで何も分かっておらず、だから読んだきり忘れていたということだったのかも知れない。
いずれにしても「贈与経済」という概念は1995年の後半には流布されていたわけだ。
わたしがこのところ吉本隆明の情況論を読み直している理由のひとつに、この「贈与経済」のことがあった。いまあらためて12年前から提出されていた概念であったと知らされてみると、じぶんのバカさ加減にあきれ、何だかきょとんとしてしまうのである。
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